7.考察

7.1 GitHub Flow演習におけるルール遵守状況の評価

GitHub Flowの習得を目的とした演習において,本研究で改定したルールにもとづき,どの程度遵守できているかを評価した.結果として,一部の例外を除き,本実験において違反として検出された結果がすべて3.1節で述べた定義に準拠していることが確認できた.以下に本実験において誤検出が確認できた事例の一部を紹介する.以下に,今回のアルゴリズムでは正しく判定することができなかった事例を2つ示す.

なお,これらの事例には著者らでは状況の再現ができなかったものも含まれている.今後,被験者の環境で実施されたgitコマンドのログを収集し,どのような状況でその事例が発生するかを調査していきたい.

7.1.1 初期コミットの誤検出

R1’ において,図7.1.1-1のように独立したmaster以外のブランチがある場合,親を持たないコミットがmasterブランチのもの以外にも存在することになる.評価の対象外である初期コミットの判定は親がないコミットとして検出しているが,この場合,初期コミット以外にも該当するため誤検出される.本来ならばmaster以外のブランチに含まれるコミットは親を持たなくとも判定の対象とすべきである.

図 7.1.1-1 独立したブランチ

7.1.2-1 ブランチ作成回数の算出誤り

R2'において,図7.1.2-1のように,○印のコミットから実際に作成されたブランチが3本であるにも関わらず,4本のブランチが作成されたものとして算出された.

図 7.1.2-1 ブランチ作成回数の算出誤り事例

原因は,○印と△印のコミットの間に親子関係が存在することによる.詳細にリモートリポジトリやプルリクエストの情報を分析したところ,△印のコミットが存在する長方形で囲まれたコミット履歴が一時的に○印のコミットに続くmasterブランチとして認識されていたことが分かった.すなわち,○印のコミットから,ブランチを作成していないにも関わらず,◇印のコミットと△印のコミットへmasterブランチが分岐したことになっている.提案手法では,子の数が増えるとブランチ数が増えるものとして算出しているため,このような事例ではブランチ作成数を誤って数えてしまうことになる.

7.2 チーム開発における遵守状況可視化の評価

チーム開発における本システムの使用時と不使用時での違反率の違いを確認した.また,Webアプリについてのウェブユーザビリティの評価をSUSを利用したアンケートで収集した.結果として,違反率の違いは見られなかった.今回の評価実験では短期開発であったが,長期開発における本システムの使用時と不使用時での違反率の違いも確認したい.また,アンケートから,本システムはGitHub Flowの遵守率の向上に貢献することができたといえる.改善点としては,遵守状況確認の周期の長さ,Webシステムのデザインの不親切さが挙げられた.

results matching ""

    No results matching ""